ターンアウトはもちろん、レッスンの時に先生から表層の筋肉は使わないように!
とか、固めて使わないように!と注意を受けたことはありませんか?
バレエでは様々な場面でターンアウトが要求されると思いますが、
ここではターンアウトに使う筋肉の特長や表層にある筋肉を固めないて使う方法についてご紹介したいと思います。
筋肉を固めるとは?
バレエではプリエやタンジュ、またアダージオのようにゆっくりとした動作もあれば、ジャンプやアレグロのように素早い動きやダイナミックな動作もあると思います。
先ほど記述した通りバレエでは様々なシーンでターンアウトが要求されますが、
筋肉はそれぞれの動作によって表層にある筋肉が優位になったり、また深層にある筋肉が優位になったりもします。
筋肉を固めること=「表層の筋肉」を使う
ということで話しを進めると、ターンアウトは主に深層にあるインナーマッスルを使うので、
レッスンでお尻の筋肉を固めないように!とか表層の筋肉を使わないように!と注意を受ける方は、もしかしたらターンアウトに使う筋肉を正しく使えていないかもしれません。
もちろん動作によって使う筋肉の割合は変わるので素早い動きやジャンプの時のターンアウトは身体の表層にある筋肉も使いますが、
ここでは主にバーレッスンやアダージオなど比較的ゆっくりとした動作や姿勢保持に使う深層筋(ターンアウト)について説明したいと思います。
ターンアウトに使う筋肉の特長
深層筋(インナーマッスル)とは?
・身体の深層にある
・ゆっくりと筋収縮する
・長時間に渡って収縮し続けられる
・弱い力で発揮される
・意識をして使うことが難しい(受動的)
これらが主に深層筋の特長でバーレッスンの時や姿勢保持をしながらターンアウトをする時は、これらの特長を良く理解した上で立ち方に気をつけたり、またトレーニングを実施する必要があります。
特にターンアウトに使う筋肉は身体の深層にあり意識をして使うことが難しいといわれているため、
股関節の可動域が狭い人や、筋肉の柔軟性が低下している人が意識をして無理にターンアウトしようとすると、前モモや外モモ、またお尻の表層にある筋肉を使いがちになります。
強制的なターンアウトによる問題点
ターンアウトの可動域は一般人でだいたい40度~50度程度と言われています。
股関節の可動域が狭く、バレエを踊るための身体作りが十分に出来ていない人が無理に足を開こうとすると、
図のように骨盤は前に倒れ、股関節から太腿はターンインし最終的に重心は足部の内側へ行きやすくなるため、足裏のアーチも潰します。
深層筋の特長でも説明した通り、筋肉は意識をして使うと表層にある筋肉が優位に働くので、タンジュを行う際も、ターンインしようとする脚を力ずくで開くと、
外モモや内モモを含めお尻の表層にある筋肉が活発に働きます。
ターンアウトは正しい
バレエポジションに立つことから
正しいポジションに立つことは、身体の深層にある筋肉を正しく使うことだけでなく、
間違った使い方によって引き起こされる障害リスクの軽減や、バレエのパフォーマンスUPにも繋がります。
上の図は腹筋を使った引き上げが無く骨盤が前に倒れ、お尻が後ろに引けている状態。
このような状態では運動連鎖より太腿はターンインし「内モモ」が機能しません。
では、正しく深層筋を働かせてターンアウトするためには?
腹筋を使い骨盤を持ち上げれると両脚は自然と内側に引き寄せられます。
右の図は骨盤の位置が安定したことで内モモも機能し(▲のライン)ターンアウトがスムーズに行えています。
ターンアウトは開くことよりむしろ上体の引き上げと内モモを機能させること。
そして骨盤がニュートラルなポジションにセットできると重心も足裏3点に乗りやすくなるため、
必要以上に太もも外側を使うことなく、また身体の深層にある筋肉もスムーズに使えるようになります。
どうやってトレーニングをしたら良い?
これから紹介するエクササイズは全てがインナーマッスルに効かせるトレーニングではありませんが、バレリーナのような細くしなやかな筋肉を作りたい場合や、
姿勢保持及び、身体のバランスをとるためには有効なトレーニングとなりますので、下記の注意点を守りながら実施してみてください。
上体の引き上げに使う
腹部及び体幹トレーニング
リバースクランチ(トレーニング目的及び、注意点)
【トレーニング目的】
主に下腹に効くエクササイズでバレエではアラベスクやアティチィードなど動作によって前傾しやすい骨盤をサポートし上体の引き上げも助けます。
【注意点】
・反動を使ってお尻を持ち上げたり、勢いよく下ろしたりしない ・膝や股関節の動作ではなく、あくまで「お腹」に効かせる ・上げた脚を下ろす時に腰は浮かせない |
オポジットアーム&レッグ(トレーニング目的及び、注意点)
【トレーニング目的】
デヴェロッペの時など片脚で安定して立つ時や、ブレない空中姿勢を維持する時は、強い支柱を作る体幹トレーニングが大変有効になります。
【注意点】
・膝はお尻の下、腕は肩の下にくるようにする ・床に付けた手足の位置(柱)はトレーニング中も変えない ・骨盤は床の面に対し「常に平行」で行う(手足を上げた時に骨盤は開かない) |
※動画の最後に紹介しているプロント&サイドブリッジが難しい方や
肩や前モモに負担が強くかかる方は、まずは膝をつけて実施するようにしてください。
1番や5番ポジションを含め
アレグロでも頻繁に使う内転筋のトレーニング
内モモの強化(トレーニング目的及び、注意点)
【トレーニング目的】
バーレッスンの1番や5番ポジションを含め、太ももの内側と外側のバランスが取れないと片足で安定して立つことができなくなります。
また、内転筋はブリゼやバッチュなどアレグロでも頻繁に使う筋肉になります。
【注意点】
・引き上げる脚は、つま先が天井を向かないように(カカトが上) ・上半身と骨盤は床の面に対し直角90度で行う ・動脚は内くるぶしから大腿内側まで繋がりを感じる(膝は曲げない) |
ターンアウトした股関節を
安定させる筋肉のトレーニング
深層外旋六筋の強化(トレーニング目的及び、注意点)
【トレーニング目的】
お尻の深層にある外旋六筋はターンアウトに使う筋肉ですが、ターンアウトと同時に開いた股関節を安定させる役割も担っています。
表層の筋肉とは違い、初めのうちはなかなか鍛えているという実感が無いかもしれませんが、うつ伏せで行うエクササイズは余計な筋肉を使うことなくピンポイントでお尻の深層筋にアプローチできるので、
インナーマッスルの特長も再確認しながら実施するようにしてください。
【注意点】
・肩から足先までを一直線上にする ・反動は使わず一定のリズムでターンイン&アウトを繰り返す ・骨盤は床から離れない範囲内で動脚を動かす |
トレーニングの注意点(まとめ)
インナーマッスルは深層筋の特長でも説明した通り、一度に出せる力は小さく(弱く)ても長時間に渡って動き続けることができ、疲労にも強いという特徴があります。
よって低負荷、もしくは自重だけで長く続けられるトレーニングが効果的です。
むやみに強い力を出すと、パワーを出すことに優れたアウターマッスル(表層筋)の働きが優位になり、インナーマッスル(深層筋)への効果が薄れてしまいます。
強い力を出して低回数しか行えないトレーニングを実施してしまうとインナーマッスルではなくアウターマッスルに効いてしまうので、注意が必要です。
その他、トレーニングは呼吸もしっかり行いながら少しずつ実施する回数やセット数も多くすることで、筋繊維周りの毛細血管が発達し、インナーマッスル自体の持久力も養うことができます。
レッスンで体力がもたない!という方はぜひ個々の体力レベルに応じて、少しずつ身体への負担も増やすよう工夫をしてみてください。